『算盤が恋を語る話』(1925)

「日記帳」という作品と同じく、江戸川乱歩が内気な男の恋の告白を暗号で女性に伝えようとするお話。会計係のサラリーマンが職場の好きな娘の机の上にソロバンで暗号を残してドキドキするという、今なら少しアブナイ男の話なのである。

「日記帳」と同じく、告白の手段としては些か卑怯である。「あの、お気持ちはわかりましたが、ごめんなさい!」と恋愛感情を拒絶された時、「な、何のこと?私はキミのこを好きではないよ」といって自分のプライドを守るためにソロバンの上に暗号として文字を残している。ソロバンだけに振ればその言葉は消えてしまうし。

でも「日記帳」の紹介の時にも言ったが、私はそういう男の心理はわからんでもないし、キライでもない。小学生の頃、最初に読んだ時にその女性からのソロバン上のアンサーで「ゆきます」の4文字が出てきた時には「やったぜ!」と子供ながらに喜んだものだが、まあ、このヘンは「日記帳」に比べて全編朗らかな反面、ありえないぐらいの偶然によって卑怯な告白に反撃されるという皮肉。

NHKの満島ひかりのドラマでは、ハライチの岩井勇気が主人公を演じていい味を出してました。そこでは満島ひかりは他の同僚とねんごろになってたが、原作の方は「あの快活な笑い声を立てながら、暖かい家庭で無邪気に談笑しているS子の姿がまざまざと浮かんでくるのでした。」と結んである。

そうなんだよね。内向的な男性の好きになる女性って、美人とかどうこうより、無邪気で朗らかで明るい女性が多い気がするね。美人でもビッチでもなく、単に何もなかったようにいつものように明るい家庭で笑ってる女性の姿を思い浮かべると、原作の方が切なさが募る気がする、今日この頃なのであります。







ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック