『毒草』(1926)

江戸川乱歩というと「フハハハハ~、明智くん、さらばだ!」系の話とか、資産家の令嬢が出てくる話とかを想像する人が多いが、意外と社会の底辺とか貧困を描くこともあって、この「毒草」という作品もそれである。

「貧乏子だくさん」という言葉がある。テレビで大家族のバラエティを見る機会が多いので私たちもイメージがソッチの方に行ってしまう。いやいや、金持ちの子だくさんファミリーもいるだろう。子供が7~8人いて、その全てに部屋が割り当てられ、家庭教師も潤沢に雇われ、長男と次男が同じ大学に学年違いで通っていたり、家族旅行はバスを借り切るとかの家族だっているだろう。

でも、うーん、やっぱイメージないな。お金持ちはわざわざテレビ局にお金をもらって撮影されなくとも済むという話もあるだろうけど、そもそもこの小説の中でも「産児制限」が本来必要のない有産階級で行われて、そうでないそうはそういう運動が起こってるのも知らないという話を、友人同士が小川の近くの原っぱで話すのである。

で、その原っぱにはあまり知られてないが堕胎の妙薬とされてる草が生えている、と。語り手の家の近所に貧乏子だくさんファミリーがいて、そこの40近い奥さんのお腹には更にまた新しい命が宿っている。すでに稼ぎの少ない亭主との間でギャーギャーヒステリーが絶えないし、もう一人赤ちゃんが生まれたらどうなっちゃうんだろうね、と、

そんなことを話して「さ、帰ろうか」と戻ろうとしたところにそのオバサンが立ってる、という中々気まずいショッキングな展開。オチは皆さんが思うよう感じのものになってるが、文筆によるドキッとする衝撃、ジワリとくる恐怖、緩急、そして余韻。通勤時間が短い人でも読み切れる短編の中にサラッと盛り込んでくる江戸川乱歩のすごさである。









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