『木馬は廻る』(1926)

貧乏で50過ぎで妻子持ちのラッパ吹きが、同じ回転木馬の施設で働く18歳の娘に淡い恋心を抱く話。江戸川乱歩の小説には事件性のない話も多いのだが、この作品はまあ、事件という事件は起こらない作品である。

スリの男が警官の目の逃れるために回転木馬に乗り込み、そこの娘の衣服にすった給料袋を隠す。それを恋文だと勘違いした主人公が煩悶したり、それを盗み取ってみたら札束が入ってて戸惑ったり、と、犯罪が出てこないと言えば出てこないわけではないのだが、

稼ぎの少ない50過ぎの男が淡い恋心を抱くのが世間一般的にはあまり可愛くない18歳の娘、というが何となくリアル。これが華やかな18歳の娘だったら淡くも何も恋心を抱かないんだろうな、とか、やっぱり可愛くなくとも18歳の年の頃の娘の発するオーラとか、若い男に話しかけて満更でもない雰囲気に対する嫉妬とか、

そういう描写が古めかしい口上とか木馬館の楽隊とか、まあ昭和の雰囲気満載で読んでて私が生まれてもいない昔が懐かしくなる作品です。って1926年って昭和元年?昭和テイストもなにも、昭和になったばかりか。とにかく、スリが隠したお金をゲットして使うか使うまいか迷いながらも大口叩いてしまったので、使うしかない、使うならパーッと、と、どんちゃん騒ぎをするところで終わる小説。

誰かが捕まるわけでもないし、特にオチもないし、ノスタルジックな普通の小説だと思って気軽にお読みください。







ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント