『お勢登場』(1926)

江戸川乱歩の作品の中でも結構メジャーな部類の作品じゃないですかね。NHKの満島ひかりのドラマでも映像化されたし、黒木華で舞台化されたらしいし。映画「RAMPO」の冒頭でもアニメで流されていたが、ホントに乱歩的なテイストに溢れた作品である。

小さい頃に読んだ時にはタイトルに違和感があった。今でも違和感は払拭しきれてない。個人的で勝手にお勢って女性が「あら明智さん、私が黒蜥蜴よ」と颯爽と登場してきそうなイメージとか、または難事件に「私が解決してさしあげますわ」と颯爽と登場してきそうなイメージを小さい頃に抱いてしまったからかも知れない。

うん。登場というと颯爽と、という表現が似合うのだが、ここでのお勢は颯爽とは登場しない。病弱な旦那を置いて浮気に出かける不貞の女房である。家に残された旦那と子供は自宅でかくれんぼをして、旦那が丈夫な長持の中に隠れると運悪く錠前が下りてしまって「白髪鬼」のような苦しみを味わうことになる。

不倫相手との逢引から帰ってきたお勢がそれに気づいて「いったいどうなすったんですの」と長持を開けて… からまた閉めちゃう!病弱の旦那が狭い長持の中でさんざん苦しんで、ようやく九死に一生を得たと思ったら悪妻にまた閉められちゃう!旦那の苦しみを想像するに壮絶すぎて忍びない。

お勢はお勢で(いったん殺意を悟られた以上)もう長持を開けることはできない。長い間、旦那の抵抗する弱弱しい力の感触に悩まされると記述されているが、それでも遺産と不倫相手との生活という大義の前では、それに耐えられる悪女を描いている。「いったいどうなすったんですの」の後に旦那を起こすのが普通の女性、フタを再度閉めちゃう悪女の登場、と、ここで「お勢登場」なのかな、と思う。

そこからのお勢は旦那の弟も華麗に欺き、多大な遺産をゲットし、煩わしい親戚からもフェードアウトして完全犯罪を達成する。江戸川乱歩自身が「お勢VS明智小五郎」の構想を話していたらしいが、それは無くて良かったなあ、と私は徒然に思っている。















ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック