『一寸法師』 (1926)

『一寸法師』って今だと何て言ったらいいんですかね、作者の江戸川乱歩のように表現すると、子供の身体に大人の頭が乗ってる人なんですが、そんな身体的に特徴のある人が世紀の犯罪者として、色々としでかすという話。

明智小五郎登場作品。江戸川乱歩はこの作品に自己嫌悪を覚えて放浪の旅に出かけ、1年と2ヶ月の断筆と相成ったというのは有名な話だが、まあ、言うほど酷くない…というか、改めて読むと実にしっかりとした作品である。

悪人である一寸法師が令嬢の切断された腕を持って百貨店に忍び込み、マネキンの女性に手を引かれている子供のフリして云々と、相変わらずそういうシーンもあるのだが、軸になっているのは令嬢消失と一人二役という、

実に探偵小説らしい骨組みだったりする。また場所と場所が離れているようでも、地図を俯瞰してみると非常に近距離だったという地形的なトリック。今ならGoogleマップを見れば一発なのだが、以降の作品への布石も結構ある。

そこに美しい実業家の妻に淡い思いを寄せる主人公の心理や、その妻が弱みを握られて凌辱されようとする描写が加わり、美女と野獣ではないが、美と醜という組み合わせの妙がエログロというか、やっぱり乱歩らしいのだ。

身体的に特徴のある人物を悪役にして、まあ不謹慎と言えば不謹慎極まりないのだが、義足をつけて健常人として振る舞っている時が逆にアリバイになっているという変装も斬新だ。つまり、普通の恰好が変装なんだと。

巨大なキューピー人形の顔の部分をパリンと割ると、という江戸川乱歩チックなシーンもあるが、そんな昔からキューピー人形があるってのも意外だったり、またあのキューピーちゃんというのもよくよく見ると怖いな、とか、

色々思うところはあるけど、強いて粗を探すとしたら明智が真犯人の罪を軽くしようと取り計らったような描写がある点が個人的には気になる。初期の明智には犯人が警察に捕まることそのものには興味がない感じはあるが、

真実を捻じ曲げるのを許容したら、それは名探偵ではないよな、という話。まあそれは良しとして、乱歩は本気で自らに嫌気がさしたのではなく、内心では傑作を産み落としたという達成感もあっての休筆だったのでは、と思う。

まさに素晴らしい充電期間と言える。何せ休筆の後に、あの『陰獣』と『芋虫』、そして『孤島の鬼』と続くのだから。もし乱歩が『一寸法師』の妖しさ、不謹慎さを悔いたなら、これらの傑作が続々と世に出るはずがないのである。







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