『妖虫』 (1933)

探偵小説と呼ばれるものには、トリックに重きをおくばかりに動機が薄かったり、ワンパターンなものが多いような気がする。2時間ドラマが隆盛となっている現代においてその傾向は顕著だと思うが、この『妖虫』は壮絶だ。

物語のたてつけ自体は、乱歩の他の有名な作品に似た部分も多い。神出鬼没の怪人に狙われる美女、探偵と赤いサソリ団と呼ばれる犯罪者との対決。よくありがちな乱歩作品のようで、結構いつもより残虐だったりする。

初っ端から美しい有名女優がバラバラになり、被害者が色んな部分で陳列されるストーリーや、小さな箱から聞こえる不気味な声、殺害予告時に天井から滴り落ちる血糊など、怖いもの見たさをそそるギミックに満ちている。

電話交換機を使ったトリックなど、乱歩もそれなりに推理小説として体をなそうとした形跡もあるが、基本は一連の怪人モノ。で、唐突に丸の内のオフィス街に巨大なサソリのかぶり物が出てきて、もう初めて読んだ時なんか

(これじゃ少年探偵団じゃないかよ)と、少年そのものだった凡作少年は思ったものであるが、まあそういう荒唐無稽なサソリのかぶり物も、ちゃっかりラストの令嬢消失のトリックに絡んでいたりするから流石は乱歩である。

不思議な表現だが、子供が読むと子供っぽいし、大人が読むと残虐で子供向きでないと感じる。どっち向けなんだという感覚だ。ところでこの作品には明智小五郎は登場せず、変わりに三笠竜介という爺さんが探偵である。

明智小五郎じゃないから仕方がないが、名探偵と呼ばれる割にはこの爺さん、いちいち後手に回る。自分の探偵事務所の犯人用の罠に監禁されたり、そのせいで結構重要な人物が殺されちゃったり、最後の方なんて

(ああ、あの爺さんは全く役にたたない)みたいに登場人物全員にバカにされたりする。それだからこそ逆に最後だけ見事に犯人を追いつめた時のカタルシスがあるのだが、やっぱり明智小五郎ではないのがミソなんだな。

で、犯人ね。動機を書いたらネタバレだからダマってるけど、天知茂の「美女シリーズ」では上手く動機を転換してたな。「赤いさそりの美女」の宇都宮雅代は美女だからなあ。いずれも逆恨みが動機なのは同じだけど。

この「赤いさそりの美女」はTSUTAYAでもレンタル中。怖さはシリーズ屈指の回なので興味のある方は是非借りてみて下さい。小説が先か、DVDが先か。いずれにしても後味の良くない、どんよりとした恐怖に包まれます。









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